院内感染対策サーベイランス集計・解析結果の概要(4〜6月分)

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○ 集中治療部門サーベイランスは、ICUにおける感染症の発生状況を把握し、その対策を支援する情報を還元することを目的とする。院内感染状況の把握を通じ、参加医療機関が自ら行う、ICUの管理・運営のパフォーマンス評価とその改善に資する情報を医療機関に提供することが可能となる。

○ 充足率

 
全集計患者数
充足患者数
APACHE/転帰
充足患者数
集計対象
充足施設数
4-6月
2,724
2,610
1,826
22

   *3ヶ月間で約3千人弱の患者が登録されたが、ディバイスは約9割の患者に使用されている。APACHEに関するデータは24時間以下のICU在室時間や16歳以下の症例などを除くため検討対象患者数は少なくなる。

○ リスクで調整した感染率

感染
NNIS/ICU
12.7
4.9
6.1
JANIS/ICU (4-6月)
12.4
0.9
0.5

         (注) 肺炎はICU入室後48時間以降に発生したもの
         (注) 感染率(1000分率)= (感染患者数/各ディバイスの延べ装着日数) ×1,000


リスクで調整した感染率は肺炎で12.4、CVカテ感染0.9、尿路感染0.5であった。肺炎に関しては米国のSurgical/Medical ICUと同等であったが、中心静脈カテーテルによる血流感染、尿路感染に関してわが国のICUのリスクで調整した感染率は低かった。


○ 単純感染率(%)

感染
その他
全感染
患者数
延べ感染
患者数
感染率 (%)
4-6月
3.8
0.5
1.3
1.1
0.3
0.9
5.7
7.9

   (注) 感染率(%)=(感染患者数/入室患者数)×100

     

感染の頻度では、肺炎、創感染、敗血症、カテ感染、尿路感染の順に多かった。全患者を対象とすると、ICU入室患者の約6%に院内感染がみられた。


○ 平均ICU在室日数、平均在院日数

 
薬剤耐性菌感染
薬剤感性菌感染
非感染
全体
平均ICU在室日数
(4-6月)
34.1 (54)
19.8 (81)
4.9 (2,236)
6.0 (2,371)
平均在院日数
(4-6月)
95.2 (44)
67.6 (66)
46.0 (1841)
47.8 (1951)

薬剤耐性菌による院内感染は薬剤感性菌による院内感染に比べてICU在室日数および在院日数延長していた。
在室日数を計算した患者数は全集計患者数から24時間以内の在室患者数、16歳未満の患者および適応外疾患を引いたもの、在院日数を計算した患者数はそれからさらに入院中の患者を引いたもの

 

○ 重症度と死亡率

 
平均実死亡率
全患者平均
標準死亡比
施設平均
標準化死亡比
4-6月
15.52
13.91
0.87
0.86

全体として予測死亡率に比べて実死亡率は同等かやや低めであり、本事業に参加したICUの治療成績は米国と同等であった。

○ 標準化死亡比

 
耐性菌
感性菌
非感染
合計
症例数
標準化死亡率 (4-6月)
2.11
1.01
0.83
0.90
2,856

薬剤耐性菌による院内感染は予測された死亡率より110%高い実死亡率となった。また、薬剤感性菌による院内感染の実死亡率は予測された死亡率と同等であった。

○ 起炎菌**

  (4〜6月)
 
肺炎
創感染
カテ感染
敗血症
その他
合計
MRSA
36
9
3
5
6
62
MRCNS
1
0
2
0
0
3
Ps. aeruginosa
18/1*
6/0*
0
4/1*
1/0*
30/2*
Enterobacter spp.
7
2
0
3
3
16
Candida
6
0
2
1
4
15
Serratia
1/1*
0
0
0
0
3/1*
K. pneumonia
0
0
1
0/1*
0
1/1*
S. Maltophilia
2
0
0
0
0
2
Acinetobacter
0
0
0
1
0
1
E. coli
0
1
0
2
0
4
その他
16
7
4
2
4
33
合計
87/2*
25
12
18/2*
18
188/4*

** 薬剤耐性菌判定基準
*  薬剤感性菌/薬剤耐性菌

ICUにおける院内感染の約30%はMRSAによるものである。一部に多剤耐性緑膿菌による院内感染も見られている。

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