院内感染対策サーベイランスの一環として、全国の２００床以上の病院のうち本サーベイランスの趣旨に賛同して参加を希望した医療機関の協力を得て、院内感染対策に問題となりうる薬剤耐性菌による感染患者の発生動向等のデータの提供を受け、患者の基礎疾患その他の背景因子、関連因子等を解析した結果を参加医療機関に還元し、また解析結果の要点を広く一般に公開することにより、全国の医療機関において実施されている院内感染対策を支援することを目的とする。
　調査対象菌種としてMRSA、PRSP、メタロβラクタマーゼ産生グラム陰性桿菌、多剤耐性緑膿菌、VRE、VRSA、その他危険と思われる薬剤耐性菌を選び、これらの耐性菌による感染患者情報を収集し、データの集計・解析を行い、季報・年報として要点を公表する。季報としては以下の内容を公表する。　

〔解説〕
　今回の季報（２００１年７〜９月）における調査参加施設数は前回とほぼ同数で、総入院患者数にも大きな変動はなく173,402名であった。そのなかで薬剤耐性菌による感染症を引き起こした患者数は1,001名と少し減少した。
各月毎に感染症に罹っている患者数を各月の総入院患者数で除したものをその月の感染率（‰）として表し、その月に新たに感染症に罹患した患者数の割合を罹患率（‰）として表した。３ｹ月間の平均感染率は5.77‰、平均罹患率は4.23‰であり、平均感染率、平均罹患率ともに前季より低下した。
　薬剤耐性菌による感染症の93.0%はMRSA感染症であり、ついでＰＲＳＰ感染症、多剤耐性緑膿菌感染症、MRSA+多剤耐性緑膿菌感染症の順で、VRE感染症が２例見られた。感染症の42.0%は肺炎であり、８月に基も多く９月には減少している。MRSA感染症に罹患した患者の基礎疾患は悪性腫瘍が21.1%と最も多く、次いで循環器系疾患13.5%、神経系疾患11.5%、消化器系疾患9.9%の順であった。基礎疾患名別の統計情報の収集が行われていないので、基礎疾患名別の感染率は表示できない。
　診療科別では７月を除き外科系が多かった。
MRSA感染患者の体温分布では37.1〜38.9℃までが59.3%を占め、39.0℃以上18.3%を加えると37.1℃以上が77.6%を占めた。白血球数分布では10,000/μL以上が49.0%、CRP値分布では1.0〜10.0mg/dL未満が46.1%、10mg/dL以上が35.8%で合わせて1.0mg/dL以上が81.9%を占めた。

　　表１．感染率及び罹患率の推移
　　表２．薬剤耐性菌別感染患者数
　　表３．ＭＲＳＡ感染件数の感染症名内訳
　　表４．ＭＲＳＡ感染件数の基礎疾患名内訳
　　表５．ＭＲＳＡ感染患者数の診療科内訳
　　表６．ＭＲＳＡ感染患者の体温分布
　　表７．ＭＲＳＡ感染患者の白血球数分布
　　表８．ＭＲＳＡ感染患者のＣＲＰ値分布

　　　　集計不能なデータを除いたため、表によって計が異なる場合がある。