○ 集中治療部門サーベイランスは、ICUにおける感染症の発生状況を把握し、その対策を支援する情報を還元することを目的とする。院内感染状況の把握を通じ、参加医療機関が自ら行う、ICUの管理・運営のパフォーマンス評価とその改善に資する情報を医療機関に提供することが可能となる。

○ 7〜9月の間に、ICU部門サーベイランスに参加した施設のなかで、感染リスクのディバイス日、重症度評価のAPACHEスコアー、退院日および退院時患者転帰、院内感染起炎菌のすべてのデータが月単位で充足している27施設のデータを基礎資料として解析を行った。それぞれの解析に用いた対象患者数は以下のごとくである。

 

全集計患者数

ディバイス日充足患者数

APACHE/転帰
充足患者数

集計対象
充足施設数

7-9月

3,510

3,303

2,801

27


○ 集中治療室に入室し、人工呼吸器などのディバイスを装着している患者の院内感染率は、(1) 肺炎発生率が14.0、(2) 血管留置カテーテル装着患者の血流感染の発生率は1.1 (3) 尿路カテーテル装着患者の尿路感染症は1.1であった。アメリカの内科外科混合ICU(NNIS/CDC)の感染率およびJANISの7-9月と比較すると以下のごとくである。(注)院内感染はICU入室後48時間以降に発生したもの

 感染

肺炎

CVカテ感染

尿路感染

NNIS/ICU

12.7

4.9

6.1

JANIS/ICU(7-9月)

14.0

1.1

1.1

(注)感染率(1000分率)=(感染患者数/各ディバイスの延べ装着日数)×1000


○ 集中治療室に入室の患者の院内感染率は、全退室患者当たり5.9%であり、その内訳は、人工呼吸器関連肺炎(4.0%)、創感染(1.0%)の順であった。また、院内感染の起炎菌の耐性:感性の比率は22%(49:176)であった。

感染

肺炎

カテ感染

敗血症

創感染

尿路感染

その他

全感染患者数

延べ感染患者数

感染率(%)(7-9月)

4.0

0.5

1.1

1.0

0.6

0.8

5.9

8.0

(注)感染率(%)= (感染患者数/入室患者数)×100


○ ICU入室患者の平均ICU在室日数並びに平均在院日数をみると、非感染者に比べ感染者の在院日数が長い傾向がみられた。ただし、ICU在室日数および在院日数と患者重症度やICUでの院内感染との関係については更なる検討が必要である。

 

耐性菌感染

感性菌感染

非感染

全体

平均ICU在室日数(7-9月)

30.2(42)

17.2(114)

4.8(2,645)

5.7(2,801)

平均在院日数(7-9月)

99.7(33)

61.9(107)

47.8(2,417)

49.0(2,557)


○ ICUでの感染症の起炎菌で調査を始めて以来、初めて緑膿菌がMRSAを上回った。
ICUにおける感染症の起炎菌の中では感性P. aeruginosa (52/227)がもっとも多く、MRSAを上回った。ついで、MRSA(39/227)、感性Enterobacter (18/227)、感性K. pneumoniae (11/227)、Candida (10/227)、感性Serratia (3/227)、の順であった。その他、多剤耐性菌としては、Enterobacter(5)、P. aeruginosa (3)、S. maltophilia (1)がみられている。グラム陰性の多剤耐性菌の検出が増加していることが見受けられる。


○ ICU部門に参加した施設ではここに掲載された感染率や標準化死亡比と当該施設のデータを比較することが可能となる。

 

平均予測死亡率

平均実死亡率

全患者平均標準化死亡比

施設平均標準化死亡比

7-9月

15.84

14.46

0.91

0.930