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本サーベイランスは、参加医療機関において血液および髄液から検出された各種細菌の検出状況や薬剤感受性パタ−ンの動向を把握するとともに、新たな耐性菌の早期検出等を目的とする。これらのデ−タを経時的に解析し臨床の現場に還元することによって、抗菌薬の安全で有効な使用方法や院内感染制御における具体的かつ確実な情報を提供する。
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2001年10〜12月の間に全国の医療機関より報告された検体数は総数50,042件(血液43,867件(258施設)、髄液6,175件(215施設))の血液及び髄液から分離された菌種について集計・解析が行われた。この1年間をみる限り総検体数、血液検体数、髄液検体数には大きな変化はみられていない。
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2001年
1〜3月
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4〜6月
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7〜9月
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10〜12月
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総検体数 |
47,047
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48,754
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53,082
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50,042
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血液検体数 |
41,387
(247)
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43,173
(256)
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46,144
(261)
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43,867(258)
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髄液検体数 |
5,660
(207)
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5,581
(219)
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6,938
(222)
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6,175(215)
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( ) 内は施設数 |
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2001年10〜12月の間に全国の医療機関より報告された検体数は総数50,042件(血液43,867件(258施設)、髄液6,175件(215施設))の血液及び髄液から分離された菌種について集計・解析が行われた。この1年間をみる限り総検体数、血液検体数、髄液検体数には大きな変化はみられていない。
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血液から分離された菌株総数に対する主要分離数の順位と頻度はS.
aureus (20%)、S. epidermidis(12%)、E. coli(10%)、S.
epidermidis 以外のCNS(9%)、K. pneumoniae(6%)、E. faecalis(4%)、P.
aeruginosa (4%)、C. albicans を除くCandida spp.(3%)、Enterobacter
spp.(3%)、S. pyogenes、S. agalactine、S. pneumoniae を除くStreptococcus
spp.(3%)とこの1年間大きな変化はみられなかった。
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そのほか従来から院内感染の原因菌として注意が必要とされている菌の分離頻度はBacillus
spp.(2.3%)、S. pneumoniae(2.1%)、C. albicans(2.1%)、S.
marcescens(2.1%)、Acinetobacter spp.(1.4%)、S. maltophilia(0.6%)、B.
cepacia(0.5%)であり、これらの菌も年間を通して分離頻度に大きな変化はみられなかった。
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髄液から分離された菌株総数に対する主要分離菌の頻度はS.
epidermidis以外のCNS(16%)、S. epidermidis(15%)、H. influenzae(14%)、S.
aureus(8%)、S. pneumoniae(6%)、Streptococcus spp.(6%)であり、H.
influenzaeの頻度は今までのどの季報と比較しても約3倍の増加がみられた。
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年齢階層別では血液分離株の場合、S. agalactiaeとS.
pneumoniaeで今までの季報と同様、二峰性の傾向(S. agalactiae;1歳未満30.7%、50歳以上57.5%、S.
pneumoniae;4歳以下17.5%、50歳以上66.7%)がみられた。また、H. influenzaeも今までの季報と同様、多くの株(91.8%)が4歳以下から分離されたものであった。髄液分離株の場合も血液分離株と同様にS.
pneumoniaeは二峰性の傾向(4歳以下36.4%、50歳以上54.5%)を示し、H. influenzaeでは大半の株が4歳以下から分離されていた(92.1%)。
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S. aureusの主要抗菌薬に対する耐性度の特徴の特徴としては、オキサシリン(MPIPC)の成績で判断する限りでは、血液から分離された515株の68%、髄液から分離された11株の72%がいわゆるメチシリン耐性株(MRSAを含む)であり、MRSAの割合は前回とほぼ同じであった。
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血液から分離された634株と髄液から分離された12株のS.
aureusのバンコマイシンに対する耐性頻度をNCCLS(米国臨床検査標準化会議)の判定基準に従い判定したが、これらの株は全てバンコマイシンに「感性」(MIC4μg/ml以下)と判定された。テイコプラニンに対しても全ての株が「感性」と判定された。CNS、S.
epidermidisについても全ての株がバンコマイシンに「感性」であったが、テイコプラニンに対してはCNSの血液分離株の2%、S.
epidermidisの1%が「中間」(MIC16μg/ml)を示した。
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腸球菌に関しては、血液から分離された128株のE.
faecalis のABPCに対する耐性頻度を判定したが、82%が「感性」(MIC≦8μg/ml)と判定された。VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)はE.
faecalis、E. faeciumとも前回、前々回と同様にみられなかった。
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S. pneumoniae 81株(血液分離69株、髄液分離12株)のペニシリンG耐性株の割合は42%(PIPC30%、PRSP12%)であり、今までの季報と同様、約半数を占めている。
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H. influenzae 33株(血液分離15株、髄液分離18株)のABPC耐性株(MIC≦1μg/ml)の割合は15%であった。なお、ABPC耐性H.
influenzae の原因としては、β-ラクタマーゼ産生株とBLNARが良く知られているが、今回のサーベイランスでは明らかにされなかった。
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ESBL産生菌のスクリーニングの基準は、(1) CAZ、CTXなどに対するMIC≧2μg/ml、(2)
β-ラクタマーゼ阻害剤添加によるMICの低下、などがあげられる。今回の調査では耐性頻度をNCCLS(米国臨床標準化会議)の判定基準に従い判定したため腸内細菌科の菌はCAZ、CTXのMICが8μg/ml以下の場合はいずれも「感性」と判定されるのでESBL菌の頻度は明らかにできなかった。しかし、E.
coliではCAZに対するMICを測定した316株(血液分離311株、髄液分離3株)の5%が、K. pneumoniaeではCAZに対するMICを測定した201株(血液分離193株、髄液分離8株)の1%、CTXに対するMICを測定した113株(血液分離106株、髄液分離7株)の1%がMIC>8μg/mlであり、これらの株の中にESBL産生株が存在する可能性も否定できない。
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P. aeruginosaやS.
marcescensではカルバペネム系抗菌薬に耐性を示すものがある。特にイミペネム耐性には、IMP-1型メタロ-β-ラクタマーゼの産生が関与しているものがあり、今後広まる恐れがあることからその動向に注意が必要である。今回の調査では微量液体希釈法で測定した153株(血液149株、髄液4株)のP.
aeruginosaのうち21%がMIC≧8μg/mlであり、そのうち14%はMIC≧16μg/mlであった。S.
marcescensでは79株(全て血液分離株)のうち1%がMIC≧16μg/mlのIPM耐性株であった。
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