概要 (2000年7・8・9月分)

検査部門サーベイランスは、参加医療機関において検出される各種細菌の検出状況や薬剤感受性パターンの動向を全般的に把握するとともに、新規耐性菌の早期検出等を目的とする。これらのデータは、抗菌薬の安全で有効な使用方法や、使用上の注意等について、具体的かつ確実な検討を行う際に参考となる。

7〜9月の間に報告された総検体数5,234検体の血液及び髄液から分離された菌種について集計・解析が行われた。

血液から分離された菌株総数に対する主要分離菌の頻度は、黄色ブドウ球菌(17%)、表皮ブドウ球菌(14%)、表皮ブドウ球菌以外のCNS(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)(10%)、大腸菌(7%)、肺炎桿菌(6%)であった。従来から院内感染の 原因菌として注意が必要とされていた細菌が上位を占めていた。皮膚常在菌である表皮ブドウ球菌やその他のCNSが、今回の集計結果で、高頻度で分離されていることに 関しては、検体採取時の皮膚表面や毛嚢などの常在菌の混入汚染も想定する必要がある。

  (注)主要菌分離頻度(%)=(分離件数/総分離菌数)×100

血液から分離された菌のうち、緑膿菌(6%)、セラチア(3%)などが比較的上位 に入り、また、グラム陽性桿菌ではバシラス(3%)も検出された。バシラスは耐熱性の芽胞を形成し、アルコール消毒や煮沸滅菌に抵抗することが知られており、これらは決して希な菌種ではないが確認された。

血液から分離された黄色ブドウ球菌の主要抗菌薬に対する耐性度の特徴としては、黄色ブドウ球菌37株におけるオキサシリン(MPIPC)の成績で判断する限りでは、 76%がいわゆるメチシリン非感性株(MRSAを含む)であった。今後の分離状況を引き続 き注意深く監視するとともに、分離株数が増加した時点で、MSSAとMRSAに分けて、薬剤感受性の状況を比較する必要がある。

今回の調査で検査された72株の黄色ブドウ球菌(MRSAを含む)は、NCCLS(米国臨床検査標準化会議)の判定基準に従い判定した結果、それらは全てバンコマイシンに「感性」(MIC, ≦4μg/ml)と判定された。また、今回調査した62株のCNSも、全てバンコマイシンに「感性」と判定された。

 


図1. 病床数階級別参加施設数

 今回は平成12年度厚生科学研究費補助金(新興・再興感染症研究事業)「薬剤耐性菌発生動向のネットワークに関する研究」検査部門サーベイランス研究班からの移行施設のみの集計となっています。他の参加機関はデータ適性のチェック期間とさせていただき、問題のない機関については次回季報より集計に加わることになっています。


図2. 陽性検査材料の頻度

(注)陽性検体のみを報告している施設のデータは集計から除外してあります。


図3. 主要菌種分離率(分離件数/総検体数)、総検体数=4,899

上位7菌種
分離件数
S. aureus
96
S. epidermidis
78
C N S
52
E. coli
45
K. pneumoniae
27
E. faecalis
27
P. aeruginosa
26
その他臨床でしばしば問題になる菌種
S. marcescens
14
Bacillus spp.
14
Acinetobacter spp.
14
B. cepacia
0
P. putida
0

グラフには分離件数の多い方から上位7菌種と臨床でしばしば問題となる菌種のみ掲載しています。


図4. 主要菌種分離頻度(分離件数/総分離菌数X100)

(注)陽性検体のみを報告している施設のデータも含まれています。


図5. 主要菌種別年齢分布

(注)陽性検体のみを報告している施設のデータも含まれています。

 グラフには分離件数の多い方から上位7菌種と臨床でしばしば問題となる菌種のみ掲載しています。


図6. 主要菌種別耐性頻度 S. aureus

(注)感受性試験で広く一般に使用されている薬剤について選択したため、保健適用とは必ずしも合致しません。

(注)グラフのバーには株数が表示されています。

・MSSAとMRSAが含まれています
・MPIPCの判定基準がIあるいはRのものがMRSAです。
・10株以上検査した薬剤についてのみ掲載しています。
・VCMとTEICの注射薬の適応はMRSA感染症のみに限られています。


図7. 主要菌別耐性頻度 S. epidemidis

(注)グラフのバーには株数が表示されています。

・10株以上検査した薬剤についてのみ掲載しています。
・VCMとTEICの注射薬の適応はMRSA感染症のみに限られています。


図8. 主要菌別耐性頻度 E. coli

(注)グラフのバーには株数が表示されています。

・10株以上検査した薬剤についてのみ掲載しています。


図9. 主要菌別耐性頻度 CNS (S. epidermidis を含まない)

(注)グラフのバーには株数が表示されています。

・10株以上検査した薬剤についてのみ掲載しています。
・VCMとTEICの注射薬の適応はMRSA感染症のみに限られています。


図10. 主要菌別耐性頻度 K. pneumoniae

(注)グラフのバーには株数が表示されています。

・10株以上検査した薬剤についてのみ掲載しています。


図11. 主要菌別耐性頻度 P. aeruginosa

(注)グラフのバーには株数が表示されています。

・10株以上検査した薬剤についてのみ掲載しています。


図12. 主要菌別耐性頻度 S. marcescens

(注)グラフのバーには株数が表示されています。

・10株以上検査した薬剤についてのみ掲載しています。


特定抗菌薬に対する薬剤感受性

(バーの中の数字は該当する株数)
バンコマイシン


 (注)CNSによる感染症の治療薬としてバンコマイシンは保険適用になっていないが、参考データとして示した。
アミカシン
エリスロマイシン
イミペネム
セフタジジム
セフォタキシム
レボフロキサシン
ミノマイシン

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