院内感染対策サーベイランス集計・解析結果の概要(7・8・9月分)

| 概要 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |


○ 集中治療部門サーベイランスは、ICU における感染症の発生状況を把握し、その対策を支援する情報を還元することを目的とする。院内感染状況の把握を通じ、医療機関が自ら行う、ICU の管理・運営のパフォーマンス評価とその改善に資する情報を医療機関に提供することが可能となる。

○ 7〜9月の間に、参加19施設のICU に入室した患者延べ2,459人のうち、集計対象患者1,099人について集計・解析が行われた。ただし、APACHE IIスコアー*1を用いた、院内感染対策の評価に関しては退院時患者転帰が完全に記載された8施設 818人の患者に対して行った。それぞれの解析に用いた対象患者数は以下のごとくである。

 
全集計患者数
充足患者数
APACHE/転帰
充足患者数
集計対象
充足施設数
7-9月
1,099
1,032
687
8

 

○ 集中治療室に入室したデバイス装着患者の院内感染率は、(1) 人工呼吸器装着患者の肺炎発生率が17.2、(2) 血管留置カテーテル装着患者の血流感染の発生率は1.1、(3) 尿路カテーテル装着患者の尿路感染は0.2であった。アメリカの内科外科混合ICU(NNIS/CDC)の感染率と比較すると以下のごとくである。

感染
肺炎(1)
カテ血流感染(2)
尿路感染(3)
NNIS/ICU
12.7
4.9
6.1
JANIS/ICU
17.2
1.1
0.2

         (注) カテ血流感染 : カテーテル関連血流感染
            感染率= (各デバイス使用者の感染患者数/各ディバイスの延べ装着日数) ×1,000

○ 集中治療室に入室した患者の院内感染率は、5.1%であり、その内訳は、人工呼吸器関連肺炎(3.1%)、創感染(1.5%)の順であった。

感染
肺炎
カテ血流感染
尿路感染
その他
全感染
患者数
延べ感染
患者数
感染率 (%)
3.1
0.4
0.9
1.5
0.1
1.0
5.1
6.9

   (注) 肺炎 : 人工呼吸器関連肺炎

      感染率=(感染患者数/各ディバイスの延べ装着日数)×1,000


○ICU 入室患者の重症度別平均ICU 在室日数並びに平均在院日数をみると、非感染者に比べ感染者の在室および在院日数が長い傾向がみられた。

 
薬剤耐性菌感染
薬剤感性菌感染
非感染
全体
平均在室日数
14.8 (18)
12.5 (35)
4.4 (765)
5.0 (818)
平均在院日数
66.9 (16)
64.2 (33)
56.7 (736)
57.2 (785)

○ICU での感染症の起炎菌はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が約30%を占める。ICUにおける感染症の起炎菌の中ではMRSA(19/71)が最も多く、ついで感性Pseudomonas aeruginosa(14/71)、感性 Klebsiella pneumoniae(4/71)、Acinetobacter baumanii(4/71)であった。その他、耐性菌としては、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌属(CNS)(2)、Serratia (2) がみられている。


○ICU 部門に参加した施設ではここに掲載された7-9月の感染率や標準化死亡比と当該施設のデータを比較することが可能となる。

 
平均実死亡率
全患者平均
標準死亡比
施設平均
標準化死亡比
7-9月
15.71
11.64
0.741
1.085