
○集中治療部門サーベイランスは、ICUにおける感染症の発生状況を把握し、その対策を支援する情報を還元することを目的とする。院内感染状況の把握を通じ、参加医療機関が自ら行う、ICUのパフォーマンス評価とその改善に資する情報を医療機関に提供することが可能となる。
○ICU部門に参加した28施設なかで、感染リスクのディバイス日、重症度評価のAPACHEスコアー、退院日および退院時患者転帰、院内感染起炎菌のすべてのデータが月単位で充足している18施設のデータを基礎資料として解析を行った。それぞれの解析に用いた対象患者数は以下のごとくである。解析対象患者数は10,633人であった。
○2004年1〜12月の間に、それぞれの解析に用いた対象患者数は以下のごとくである。
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全集計患者数
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ディバイス日充足患者数
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APACHE/転帰
充足患者数
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集計対象
充足施設数
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1-12月
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10,633
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10,145
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10,206
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18
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○ 集中治療室に入室し、人工呼吸器などのディバイスを装着している患者の院内感染率は、@肺炎発生率が9.7、A血管留置カテーテル装着患者の血流感染の発生率は1.2、B尿路カテーテル装着患者の尿路感染症は0.6であった。アメリカの内科外科混合ICU(NNIS/CDC)の感染率と比較すると以下のごとくである。(注)院内感染はICU入室後48時間以降に発生したもの
感染
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肺炎
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CVカテ感染
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尿路感染
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NNIS/ICU
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5.8
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5.0
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5.3
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JANIS/ICU (1-12月)
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9.7
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1.2
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0.6
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(注)感染率(1000分率)=(感染患者数/各ディバイスの延べ装着日数)×1000
○ 集中治療室に入室の患者の院内感染率は、全退室患者当たり3.7%であり、その内訳は、人工呼吸器関連肺炎(3.0%)、創感染(0.9%)の順であった。また、院内感染で多剤耐性菌によるものは37%(耐性:感性=249:419)であった。
(注)感染率(%)= (感染患者数/入室患者数)×100
○ ICU入室患者の平均ICU在室日数並びに平均在院日数をみると、非感染者に比べ感染者の在院日数が長い傾向がみられた。
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耐性菌感染
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感性菌感染
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非感染
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全体
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平均ICU在室日数(1-12月)
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30.7(274)
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25.5(319)
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4.8(10,396)
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6.2(11,073)
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平均在院日数(1-12月)
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93.1(196)
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95.0(338)
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53.5(9,262)
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55.8(9,834)
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(注) ( )内は延べ患者数
○ ICUでの感染症の起炎菌でMRSAが約30%をしめた。
ICUにおける感染症の起炎菌の中ではMRSA(223/668)が最も多く、ついで感性緑膿菌(94/668)、Candida(36/668)、感性S. maltophilia (34/668)、感性エンテロバクター(24/668)、感性K. pneumoniae(18/668)、感性Serratia(18/668)であった。
○ ICU部門に参加した施設ではここに掲載された1-12月の感染率や標準化死亡比と当該施設のデータを比較することが可能となる。
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平均予測死亡率
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平均実死亡率
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全患者平均標準化死亡比
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施設平均標準化死亡比
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1-12月
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18.57
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17.33
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0.93
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1.01
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○ 院内感染の患者転帰に与える影響を、退院時患者転帰をすべて記入した20施設9,820症例で検討を加えると、多剤耐性菌によって院内感染を獲得すると、その死亡リスクは1.5倍悪化することが推察された。
起炎菌のタイプ |
耐性菌 |
感性菌 |
非感染 |
合計 |
症例数 |
標準化死亡率 |
1.83 |
1.36 |
0.91 |
0.93 |
10,206 |
※薬剤耐性菌判定基準

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