【全入院患者サーベイランスの目的】  

 
院内感染対策サーベイランスの一環として、全国の200床以上の病院のうち本サーベイランスの趣旨に賛同して参加を希望した医療機関の協力を得て、院内感染対策に問題となりうる薬剤耐性菌による感染症患者の発生動向等のデータの提供を受け、患者の基礎疾患その他の背景因子、関連因子等を解析した結果を参加医療機関に還元し、また解析結果の要点を広く一般に公開することにより、全国の医療機関において実施されている院内感染対策を支援することを目的とする。
 調査対象菌種としてMRSAPRSP、メタロβラクタマーゼ産生グラム陰性桿菌、多剤耐性緑膿菌、VREVRSA、その他危険と思われる薬剤耐性菌を選び、これらの耐性菌による感染患者情報を収集し、データの集計・解析を行い、季報・年報として要点を公表する。年報としては以下の内容を公表する。 


【解説
 今回の年報(2003112)では、調査対象施設数は、国立病院グループ27施設で、調査対象となった総入院患者数は340,140名であった。そのなかで薬剤耐性菌による感染症を引き起こした患者数は1,846名であった。薬剤耐性菌別では、MRSA感染症患者は1,580名で、MRSAと多剤耐性緑膿菌との混合感染症患者は37名で、MRSAとメタロβラクタマーゼ産生グラム陰性桿菌との混合感染症患者の報告はなかった。PRSP感染症患者は152名、多剤耐性緑膿菌感染症患者は70名、メタロβラクタマーゼ産生グラム陰性桿菌感染症患者は7名であった。VREVRSA感染症の報告はなかった。
感染症患者数を総入院患者数で除した感染率(‰)は5.62‰で、新規感染者数を総入院患者数から継続感染患者数を引いた数で除した罹患率(‰)は、4.60‰であった。耐性菌別の感染率、罹患率はそれぞれMRSA感染症では4.81‰、3.96‰、PRSP感染症では0.46‰、0.45‰、多剤耐性緑膿菌感染症では0.21‰、0.13‰であった。
 感染症患者の性別はMRSA感染症患者及びPRSP感染症患者ともに60%以上が男性であった。
薬剤耐性菌による感染症名の内訳は、MRSA感染症については肺炎が最も多く46.4%で、次いで手術創感染(11.4%)、菌血症(11.0%)、消化器疾患(9.5%)、皮膚・軟部組織感染(7.7%)の順であった。PRSP感染症については肺炎(63.2%)、肺炎以外の呼吸器感染(24.3%)の順であった。
薬剤耐性菌による感染症患者全体の基礎疾患名の内訳は、悪性腫瘍最も多く19.3%、次いで循環器系疾患(15.5%)、呼吸器系疾患(12.4%)、神経系疾患(10.2%)、消化器系疾患(9.5%)の順であった。

     表1.サーベイランス参加施設の規模内訳
表2.薬剤耐性菌別感染症及び罹患患者数の内訳
表3.感染症及び罹患患者の性別内訳
表4.感染症及び罹患患者の感染症名内訳
表5.感染症及び罹患患者の基礎疾患名内訳

なお、集計不能なデータを除いたため、表によって計が異なる場合があります。