概要 (2007年1・2・3月分) ○ 本サーベイランスは、参加医療機関において血液および髄液から分離された各種細菌の検出状況や薬剤感受性パターンの動向を把握するとともに、新たな耐性菌の早期検出等を目的とする。これらのデータを経時的に解析し臨床の現場に還元することによって、抗菌薬の安全で有効な使用方法や院内感染制御における具体的かつ確実な情報を提供する。 【検 体】
○ 2007年1〜3月の間に全国の医療機関より報告された検体数は総数74,895件(血液69,738件(205施設)、髄液5,157件(168施設))であった。 ○ 検体から菌が分離された頻度(検体陽性率)は11.0%(血液検体で11.5%、髄液検体で4.6%)であった。
【分離頻度】
○ 血液検体総数に対する主要分離菌の頻度では、黄色ブドウ球菌(S. aureus)(2.70%)、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)(1.92%)、大腸菌(E. coli)(1.54%)、表皮ブドウ球菌以外のコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)(1.14%)、S. pyogenes、S. agalactiae、S. pneumoniaeを除くStreptococcus spp.(0.58%)、腸球菌(E. faecalis)(0.56%)、肺炎桿菌(K. pneumoniae)(0.53%)、肺炎球菌(S. pneumoniae)(0.44%)、緑膿菌(P. aeruginosa)(0.43%)、C. albicans以外のカンジダ属(0.29%)が上位を占め、第1〜4位までの菌種は前回(2006年10〜12月)と全く同様であった。 ○ 髄液検体総数に対する主要分離菌の頻度では、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)(1.01%)、肺炎球菌(S. pneumoniae)(0.85%)、表皮ブドウ球菌以外のコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)(0.70%)、黄色ブドウ球菌(S. aureus)(0.58%)、インフルエンザ菌(H. influenzae)(0.43%)が上位を占めていた。 ○ 血液から分離された菌株総数に対する主要分離菌の頻度では、黄色ブドウ球菌(S. aureus)(20%)、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)(14%)、大腸菌(E. coli)(12%)、表皮ブドウ球菌以外のコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)(9%)、S. pyogenes、S. agalactiae、S. pneumoniaeを除くStreptococcus spp.(4%)、腸球菌(E. faecalis)(4%)、肺炎桿菌(K. pneumoniae)(4%)、肺炎球菌(S. pneumoniae)(3%)、緑膿菌(P. aeruginosa)(3%)、C. albicans以外のカンジダ属(2%)が上位を占め、第1〜4位までの菌種は前回(2006年10〜12月)と全く同様であった。 ○ 髄液から分離された菌株総数に対する主要分離菌の頻度は、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)(18%)、肺炎球菌(S. pneumoniae)(16%)、表皮ブドウ球菌以外のコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)(13%)、黄色ブドウ球菌(S. aureus)(11%)、インフルエンザ菌(H. influenzae)(8%)であった。 ○ 年齢階層別では血液分離株の場合、肺炎球菌(S. pneumonia)(4歳以下18.2%、50歳以上66.8%)、S. agalactiae(4歳以下12.1%、50歳以上70.7%)において二峰性の傾向がみられた。H. influenzaeでは55.9%が4歳以下の小児より分離されていた。髄液分離株の場合では、H.
influenzaeは90.9%が4歳以下の小児より分離されていた。
【薬剤感受性】
〔“微量液体希釈法(MICで報告されているもの)”のみ対象とした。血液分離株と髄液分離株の合計について概説した。〕
○ 黄色ブドウ球菌(S. aureus)のMRSAの割合はオキサシリン(MPIPC)の成績で判断する限り、59%(血液分離株で59%、髄液分離株で56%)であった。 ○ 黄色ブドウ球菌(S. aureus) に対する耐性頻度の調査においてすべての株がバンコマイシン(VCM)及びテイコプラニン(TEIC)に「感性」と判定されていた。 ○ 腸球菌に関しては2006年10〜12月の成績とほとんど同様でE. faecalisの98%がアンピシリン(ABPC)に感性であった。VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)に対してE.
faecalis、E. faeciumの全ての株が「感性」と判定された。TEICに対してもE.
faecalis、E. faeciumの全ての株が「感性」と判定された。 ○ 肺炎球菌(S. pneumonia)におけるペニシリン非感性株の割合は17%(PISP14%、PRSP3%)であった。 ○ 大腸菌(E. coli)や肺炎桿菌(K. pneumoniae)では近年第三世代セファロスポリン系抗菌薬に耐性を示すESBL産生菌が院内感染の原因菌として注目されてきている。今回の調査における第三世代セファロスポリン系抗菌薬耐性株の割合は、大腸菌(E. coli)でセフォタキシム(CTX)耐性株6%、セフタジジム(CAZ)耐性株3%、肺炎桿菌(K. pneumoniae)でCTX耐性株1%、CAZ耐性株2%であった。 ○ 緑膿菌(P. aeruginosa)では多剤耐性菌の動向に注意を払う必要がある。中でもカルバペネム系抗菌薬に耐性を示すメタロβラクタマーゼ産生菌は今後広まることが危惧されている。今回の調査では緑膿菌(P. aeruginosa)のイミペネム(IPM)耐性株の割合は30%であった。また、メタロβラクタマーゼ産生菌はセラチア・マルセッセンス(S. marcescens)にもみられているが、今回の調査では、セラチア・マルセッセンス(S. marcescens)におけるIPM耐性株はみられなかった。
表. 血液から分離された菌における汚染菌の頻度
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