【全入院患者サーベイランスの目的】
院内感染対策サーベイランスの一環として、全国の200床以上の病院のうち本サーベイランスの趣旨に賛同して参加を希望した医療機関の協力を得て、院内感染対策に問題となりうる薬剤耐性菌による感染患者の発生動向等のデータの提供を受け、患者の基礎疾患その他の背景因子、関連因子等を解析した結果を参加医療機関に還元し、また解析結果の要点を広く一般に公開することにより、全国の医療機関において実施されている院内感染対策を支援することを目的とする。
調査対象菌種としてMRSA、PRSP、メタロβラクタマーゼ産生グラム陰性桿菌、多剤耐性緑膿菌、VRE、VRSA、その他危険と思われる薬剤耐性菌を選び、これらの耐性菌による感染患者情報を収集し、データの集計・解析を行い、季報・年報として要点を公表する。季報としては以下の内容を公表する。
【解説】
今回の季報(2003年10〜12月)における調査対象施設数は、国立病院グループ26施設で、この期間の調査対象となった総入院患者数は81,328名であった。そのなかで薬剤耐性菌による感染症を引き起こした患者数は351名であった。(前期 340名)
各月毎に感染症に罹っている患者数を各月の総入院患者数で除したものをその月の感染率(‰)として表し、その月に新たに感染症に罹患した患者数の割合を罹患率(‰)として表した。3ヶ月間の平均感染率は4.32‰、平均罹患率は3.63‰であった。(前期 平均感染率 4.17‰、平均罹患率 3.70‰)
薬剤耐性菌による感染症の92.31%はMRSA感染症(前期 92.94%)であり、次いでPRSP感染症(6.55%)(前期 5.29%)、多剤耐性緑膿菌感染症(0.28%)(前期 0.59%)の順で、VRE感染症の報告はなかった。感染症の51.38%は肺炎で、次いで菌血症(10.09%)、消化器系感染症(9.48%)、手術創感染(8.87%)、皮膚・軟部組織感染症(5.50%)、尿路感染症(3.06%)であった。MRSA感染症に感染した患者の基礎疾患は悪性腫瘍が19.83%と最も多く、次いで循環器系疾患(15.57%)、呼吸器系疾患(13.86%)、神経系疾患(12.15%)、消化器系疾患(9.17%)、内分泌代謝疾患(6.18%)であった。基礎疾患名別の統計情報の収集が行われていないので、基礎疾患名別の感染率は表示できない。
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表1.感染率及び罹患率の推移 |
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表2.薬剤耐性菌別感染症患者数 |
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表3.MRSA感染症の感染症名内訳 |
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表4.MRSA感染症の基礎疾患名内訳 |
なお、集計不能なデータを除いたため、表によって計が異なる場合があります。
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