院内感染対策サーベイランスの一環として、全国の200床以上の病院のうち本サーベイランスの趣旨に賛同して参加を希望した医療機関の協力を得て、院内感染対策に問題となりうる薬剤耐性菌による感染患者の発生動向等のデータの提供を受け、患者の基礎疾患その他の背景因子、関連因子等を解析した結果を参加医療機関に還元し、また解析結果の要点を広く一般に公開することにより、全国の医療機関において実施されている院内感染対策を支援することを目的とする。
調査対象菌種としてMRSA、PRSP、メタロβラクタマーゼ産生グラム陰性桿菌、多剤耐性緑膿菌、VRE、VRSA、その他危険と思われる薬剤耐性菌を選び、これらの耐性菌による感染患者情報を収集し、データの集計・解析を行い、季報・年報として要点を公表する。季報としては以下の内容を公表する。
〔解説〕
今回の季報(4〜6月)における調査参加施設数は前回とほぼ同数で、総入院患者数にも大きな変動はなく179,747名であった。そのなかで薬剤耐性菌による感染症を引き起こした患者数は1,134名と少し減少した。
各月毎に感染症に罹っている患者数を各月の総入院患者数で除したものをその月の感染率(‰)として表し、その月に新たに感染症に罹患した患者数の割合を罹患率(‰)として表した。3ヶ月間の平均感染率は6.31‰、平均罹患率は4.86‰であり、平均感染率、平均罹患率ともに前季より低下した。
薬剤耐性菌による感染症の92.6%はMRSA感染症であり、次いでPRSP感染症、多剤耐性緑膿菌感染症、メタロβラクタマーゼ産生グラム陰性桿菌感染症で、VRE感染症の報告はなかった。感染症の47.5%は肺炎であり、4月、5月、6月と月ごとに減少し、今季の特色となっている。MRSA感染症に罹患した患者の基礎疾患は悪性腫瘍が20.0%と最も多く、次いで循環器系疾患14.8%、神経系疾患12.1%、呼吸器疾患8.8%であった。
MRSA感染患者の体温分布では37.1〜38.9℃までが56.4%を占め、白血球数分布では10,000/μL以上が47.0%、CRP値分布では1.0〜10.0mg/dL未満が42.4%、10mg/dL以上では40.3%で、前季に比べてほとんど変わりはなかった。