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本サ−ベイランスは、参加医療機関において血液および髄液から分離された各種細菌の検出状況や薬剤感受性パタ−ンの動向を把握するとともに、新たな耐性菌の早期検出等を目的とする。これらのデ−タを経時的に解析し臨床の現場に還元することによって、抗菌薬の安全で有効な使用方法や院内感染制御における具体的かつ確実な情報を提供する。
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2001年1〜3月の間に全国の医療機関より報告された検体数は総数47,047件
(血液41,387件 (247施設)、髄液5,660件 (207施設)) であり、前回の報告 (2000年10〜12月季報) とほぼ同様の結果であった。
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2000年7〜9月
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10〜12月
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2001年1〜3月
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総検体数 |
5,234
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44,720
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47,047
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血液検体数 |
4,899
(12)
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39,217
(251)
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41,387
(247)
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髄液検体数 |
335
(10)
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5,503
(216)
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5,660
(207)
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検体陽性率は血液で11% (2000年7〜9月;9.8%、同10〜12月;13%)、髄液で5.1%
(2000年7〜9月;9.3%、同10〜12月;5.9%) であった。
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血液から分離された菌株総数に対する主要分離菌の頻度はStaphylococcus
aureus (21%)、 Staphylococcus epidermidis (13%)、Escherichia
coli (10%)、Staphylococcus epidermidis 以外のCNS (コアグラ−ゼ陰性ブドウ球菌)
(7.6%)、Enterococcus faecalis (5.0%)、Klebsiella pneumoniae
(4.0%)、Pseudomonas aeruginosa (3.9%)、 Candida albicans
を含むCandida spp. (5.0%)、Enterobacter spp. (2.4%)、
Serratia marcescens (2.0%)、Acinetobacter spp. (1.0%)、Burkhorderia
cepacia (0.8%) 、 Stenotrophomonas maltophilia (0.4%)
などの従来から院内感染の原因菌として注意が必要とされている菌が主であり、前回、前々回の季報 (平成12年度7〜9月期、同10〜12月期)
と同様の傾向を示した。
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髄液から分離された菌株総数に対する主要分離菌の頻度はS.
aureus (18%)、CNS (12%)、S. epidermides (12%)、Streptococcus
pneumoniae (10%)、Haemophilus influenzae (5.5%)と従来から注意が必要とされている菌が上位を占めていたが、H.
influenzae の頻度は前回の季報と比べると半減していた。
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年齢階層別では血液分離株の場合、Streptococcus
agalactiae で二峰性の傾向がみられ (S. agalactiae: 4歳以下17.4%, 50歳以上63%)、H.
influenzae では83%が4歳以下の小児より分離されていた。 髄液分離株の場合ではS. peumoniae
(4歳以下26.4%, 50歳以上26.4%) が二峰性の傾向を示した。また、H. influenzae では全例が4歳以下の小児より分離されていた。
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S. aureus のMRSAの割合はオキサシリン
(MPIPC) の成績で判断する限り、血液分離株では63%と前回と比べて若干減少していた。 一方、髄液分離株では83%であり、前回と比べて10%増加していた。
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S. aureus のバンコマイシンに対する耐性頻度の調査では前回、前々回の季報と同様、調査した株の全てがバンコマイシンに「感性」と判定された。CNS、S.
epidermidis については前回、前々回とも全ての株がバンコマイシンに「感性」と判定されたが、今回の調査ではS.
epidermidis のうち血液分離株の0.6%が「中間」と判定された。
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腸球菌に関しては、VRE (バンコマイシン耐性腸球菌)
が注目を集めているが、今回の調査でも前回、前々回と同様にVREはE. faecalis、E. faecium ともみられなかった。
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S. pneumoniae のペニシリン耐性株の割合は51%
(PISP40%、PRSP 8.5%、PISP or PRSP 2.1%)であり、前回の季報よりも14%減少した。特にPRSPの割合は前回が19%であったので、ほぼ半減していた。
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K. pneumoniae やE.
coli は本来第三世代セフェム系抗菌薬に対しては耐性がみられないとされているが、今回の調査では第三世代セフェム系抗菌薬に対して耐性を示す株が若干みられた
(血液分離株の第三世代セフェム系抗菌薬に対する耐性株の割合は、K. pneumoniae の血液分離株においてCAZ耐性株3.0%、E.
coli の血液分離株においてCAZ耐性株5.3%、CTX耐性株0.6% (髄液分離株は数が少ないため検討せず))。近年、ESBLを産生し、第三世代セフェム系抗菌薬に対して耐性を示すK.
pneumoniae やE. coli が院内感染の原因菌として問題となってきているが、今回の調査で耐性を示した株の中にもESBL産生菌が含まれている可能性は否定できない。
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P. aeruginosa では多剤耐性菌の動向に注意を払う必要がある。中でもカルバペネム系抗菌薬に耐性を示すメタロ-β-ラクタマーゼ産生菌は今後広まることが危惧されている。今回の調査では血液分離株における緑膿菌のIPM耐性株の割合は血液分離株で全分離株で23%であった。また、メタロ-β-ラクタマーゼの産生菌はS.
marcescens でもみられているが、S. marcescens の血液分離株におけるIPM耐性株の割合は2.7%であった。しかし、これらのIPM耐性P.
aeruginosa とS. marcescens の中にどのくらいの頻度でメタロ-β-ラクタマーゼ産生菌が存在するのかは今回のサーベイランスでは明らかにできなかった。
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