院内感染対策サーベイランス集計・解析結果の概要(10・11・12月分)

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○ 集中治療部門サーベイランスは、ICUにおける感染症の発生状況を把握し、その対策を支援する情報を還元することを目的とする。院内感染状況の把握を通じ、参加医療機関が自ら行う、ICUの管理・運営のパフォーマンス評価とその改善に資する情報を医療機関に提供することが可能となる。

ICU部門参加施設数は7〜9月の19施設から46施設へと増加した。それに伴って報告患者数は2,459人から5,550人へ、そのうち集計対象患者数は1,099人から2,941人へ増加した。

○ 10〜12月の間に、ICU部門サーベイランスに参加した施設のなかで、感染リスクのディバイス日、重症度評価のAPACHEコアー、退院日および退院時患者転帰、感染症起炎菌のすべてのデータが月単位で充足している28施設のデータを基礎資料として解析を行った。それぞれの解析に用いた対象患者数は以下のごとくである。

 
全集計患者数
ディバイス日*2充足患者数
APACHE/転帰
充足患者数
集計対象
充足施設数
10-12月
2,941
2,722
2,103
28

○ 集中治療室に入室し、人工呼吸器などを装着している患者の感染率は、(1) 人工呼吸器装着患者の肺炎発生率が15.4、(2) 尿路カテーテル装着患者の尿路感染症は0.9、(3) 血管留置 (CV) カテーテル装着患者の血流感染の発生率は1.6であった。アメリカの内科外科混合ICU(NNIS/CDC)の感染率およびJANISの7〜9月と比較すると以下のごとくである。

感 染
NNIS/ICU
12.7
4.9
6.1
JANIS/ICU (10-12月)
15.4
1.6
0.9
      (注)感染率(発生率)=(感染患者数/各ディバイスの延べ装着日数)×1,000

○ 集中治療室に入室の患者の感染率は、全退室患者当たり5.1%であり、その内訳は、人工呼吸器関連肺炎(3.7%)、創感染(1.4%)の順であった。また、感染症の起炎菌の耐性:感性の比率は1:2であった。

感染
その他
全感染
患者数
延べ感染
患者数
感染率 (%)
10-12月
3.7
0.6
1.0
1.4
0.4
0.3
5.1
7.3
      (注)感染率(%)= (感染患者数/入室患者数)×100

○ ICU入室患者の重症度別平均ICU在室日数並びに平均在院日数をみると、非感染者に比べ感染者の在院日数が長い傾向がみられた。

 
薬剤耐性菌感染
薬剤感性菌感染
非感染
全体
平均ICU在室日数
(10-12月)
20.1 (52)
20.1 (83)
4.7 (2,163)
5.6 (2,298)
平均在院日数
(10-12月)
71.3 (46)
67.6 (73)
47.4 (2070)
48.6 (2,189)

○ ICUでの感染症の起炎菌でMRSAが約1/3をしめる。
 ICUにおける感染症の起炎菌の中ではMRSA(64/200)(36/127)が最も多く、ついで感性緑膿菌(28/200)(26/127)、感性エンテロバクター(11/200)、Candida(10/200)、感性Serratia (6/200)(2/127) 感性肺炎桿菌(4/200)(6/127)であった。その他、耐性菌としては、緑膿菌 (2)、B. cepacia (1)、S. maltophilia (1)がみられている。7-9月の集計ではCNS (3)、Serratia (2)がみられていた。

○ ICU部門に参加した施設ではここに掲載された10-12月の感染率や標準化死亡率と当該施設のデータを比較することにより、当該施設の感染対策の全国平均からみた客観的評価が可能となる。

 
平均実死亡率
全患者平均
標準死亡比
10-12月
16.51
14.98
0.908